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Channel: リオタデザイン|建築設計事務所
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MY HOME+ Vol.37

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最新の[MY HOME+ Vol.37~緑と暮らす家]に「隅切りの家」を掲載して頂きました.

[MY HOME+ Vol.37] エクスナレッジ社
http://www.myhomeplus.com/

去年竣工した隅切りの家は,目の前に河原の桜並木がひろがり,まさに「緑と暮らす家」という特集にぴったりの家かもしれません.この家ができて,すぐに生まれたお子さんと一緒に,幸せそうな暮らしのカットが続いています.

得がたい敷地との出会い,そして困難も多かったのに笑いの絶えなかった設計プロセス,そして現在もクライアントと親密な関係が続いているという意味でも,我々にとってもこの上なく幸せな家です.

手に取ったスタッフが一言「すごい,本の高さやキッチンに置かれているものがすべて等間隔に揃ってる!」そうなんです.正直,撮影時に取材側はほとんど物にタッチしていません.迎え入れたクライアントが,コーディネートされたそのままの姿で撮影しています.ああ,このクライアントにしてこの家あり!それは何か?家に対する愛情だと思うのです.

巻頭に『今号の一枚』というコーナーがあり,そこでも隅切りの家のカットが紹介されていました.『撮影時,どこを切り取っても美しいお宅に,編集スタッフもカメラマンに「もう一枚追加で!」と,ついついリクエスト』とのキャプションが.思わぬサプライズに嬉しくなりました.

編集スタッフの皆さま,ありがとうございました.
またTさん,取材のご協力ありがとうございました!



休戦日

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もうここ1~2週間,頭がおかしくなりそうな忙しさ.どれひとつ取っても気が抜けない,シビアで,タフで,ヘビーな打合せ&現場&交渉事が続いています.

そして来週もスケジュールはびっしり!1日に打合せがダブルヘッダー,トリプルヘッダーはあたりまえ,移動は駆け足,お昼は歩きながら,どうにもこうにも頭のおかしくなりそうな週になりそうです.

ところが,今日は本当に静かな1日だったのです.

3人のスタッフのうち2人もお休みを取り,電話もメールも少なく,もう夏休みですか?というくらいの平和ぶり.昨夜までの血なまぐさい銃撃戦が嘘のようです.束の間の休戦協定に,今日は優雅に雑務を片付け,まだ外が明るいのにもう仕事は切り上げることにします.

そんな金曜日.
なんという贅沢!

【DIVE】オープンハウスのお知らせ

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千葉県柏市で現場進行中の住宅「DIVE」がまもなく竣工致します.
かかった工期は木造では異例の8ヶ月.難工事に続く難工事でしたが,ようやくその姿が現れました.オープンハウス(内覧会)を行いますので,ご興味ある方は是非足をお運び下さい.

その敷地は高台の上にあり,約30度の傾斜面が大きな空と広がりのある眺望に向かって開いていました.計画にあたっては,道路から2mほど落ち込んだ敷地面の,わずかばかりの踊り場面に最小面積の基礎を接地させ,そこからやじろべえのように大きなはね出しを設けることで,傾斜地における基礎工事の負担や地盤への影響を減らし,同時に浮遊感のある開放的なリビングを獲得しました.

その2.7mもの大きなはね出し構造も含め,主な構造は木造在来工法により実現しています.北側に設けたどの開口からもその絶景を一望し,その空間体験はまさに空に浮かんでいるかのようです.

【DIVE】
日時:2014年8月9日(土) 11:00~17:00ごろまで

場所:千葉県柏市大室
つくばエクスプレス「柏たなか駅」東口下車徒歩約20分.
お車の場合は,常磐自動車道柏IC下車,下道で約10分

見学ご希望の方にはご案内をお送り致します.関本までメール下さい.
riota@riotadesign.com


○初期の構想スケッチより

追い込み中(まだ?)

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今日は施主を交えての竣工検査がありました.

竣工検査,それは私が家づくりのプロセスで最もピリピリする瞬間.最後にクライアントに気持ちのよい状態で引渡せないと,必ずあとにズルズルと引きずってしまうからです.だから私は竣工の状態にはこだわるのです.それが全てなのです.

検査時にはすべての仕上げや建具が納まり,当然クリーニングも終わっているのです.そう文字通りどこから見ても完成した状態で,で,で・・・

絶賛工事中(愕然)

いえ,私などは学生課題を見ておりましたので慣れっこなのでございます.図面が描かれているべきその場所には図面がないのですから.いやいや,そんなはずはない.想像の翼を広げ,澄んだ心の目で見ると,じわりじわりと浮かんでくるではありませんか.あぁ見える,見えるぞ.君の描きたかった空間が,ボクには見えるぞ!

嗚呼学生よ.若い君たちに伝えたいことがある.よく聞きなさい.
「社会に出たらこんなの通用しないぞ」

先生,社会って案外奥が深いのですね.


お施主さんごめんなさい!
1週間後のオープンハウス,そしてお引渡しの時にはきっと,きっと・・.
オープンハウス来場予定の皆さま,わかってますよね,どうかその澄んだ目で,その澄んだ心の目で空間を見て下さい.そう,きっとあなたなら見えるはず!

というわけで現場は最後の追い込み中(まだ?).リオタデザインのトレードマーク,ルーバー手摺りの取付け真っ最中なのでございます.暑い中ご苦労様です.引渡しまでになんとか形にしましょう!いやしてくださいおねがいします.


↑斬新なデザインでしょう?
・・て違います.このあと上端を真っ直ぐに揃えてカットします.
え?このままの方がいい?

今年の夏期講習,開講です

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毎年この季節になると学生さんがオープンデスクにやってきます.例年は日大の教え子が多かったのですが,今年は山形からわざわざ熱心な学生が門を叩きにやってきました.

オープンデスクというのは建築業界ならではの呼び方で,いわゆる無給の研修生(インターン)という位置づけです.著名事務所になると,そこで学べるということがステイタスになるためか,常時多くのオープンデスクが出入りし模型製作などを手伝うというのが通例になっています.

ただ,私はこのオープンデスクという制度があまり好きではありません.どうも事務所サイドの体よく安い(無給の)労働力を得るという事情が見え隠れしていて,事務所によっては堂々と「オープンデスク募集」などと出しているところもありますが,要は「タダで働いてくれる都合の良い人募集」というわけで,それってどうなの?って思います.

毎年うちに来るオープンデスクの学生さんには,うちの業務としての模型や図面には一切触らせません.その代わり実在の「設計課題」を出して,私がみっちりエスキースします.ちょっとした建築の夏期講習みたいなものでしょうか.

今年は上記の課題に加えて,現場やクライアントの打合せにも同席させて,そのリアルな設計の現場を体験してもらおうと考えています.現場でどのように建築は作られるのか,その空気や職人さんの汗も含めて感じてもらいたいと思います.

また,我々が住宅を設計する先にはどんなクライアントがいるのか,そこにはどんな会話があり,どんな風にデザインが決まってゆくのか,どれも大学では教えてくれないことばかりです.

今年の学生はこちらに身を寄せる実家があるわけでもなく,山形から自費でやってくると聞いて意気に感じました.すぐにアツくなる私の性分ゆえ,少々スパルタになるかもしれませんがご容赦を.リオタデザイン今年の特別夏期講習,開講です.

【入荷】はねだしテラスの家

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先月にプレゼンして,お預けしていた模型が戻ってきました.
新座市に計画中の「はねだしテラスの家」.ベタなネーミングですが,外壁から2mもせり出した大きなテラスが特徴の家です.

模型をお預けしていたというのも,奥様のご出産がプレゼン日とかぶりそうだったから.プレゼンに同席できないかもしれない奥様に,模型に雄弁に語って頂くために,久しぶりに1/50スケールで作成しました(いつもこんな大きな模型作るわけではないので,他の方はどうか期待なさらないように・・).作戦が功を奏したか,大変喜んで頂きました.

このはねだしテラスがあるのは,実は北側道路側.南側はマンションが見下ろす敷地のため,南側からは採光のみ,眺望はむしろ北側とトップライトに開くという手法を取っています.

北側道路に縦列駐車というのは,この規模の敷地では典型的な解き方なのですが,その上空っていつももったいないと思っていました.駐車場を覆うようなテラスがあれば有効活用できますよね!

しかもこのテラスの上にはオーニングが取り付いていて,雨の時にはガーッとこのテラスにすっぽり屋根を架けてしまうんです.そうすれば雨でもこのテラスを活用することができます.テラスの下の自転車も濡れないし,一石二鳥というわけです.

でもこんな大きなテラス,構造的にどうやって持たせているの?そこは弊社の特殊はね出し技術の賜です(社外秘・・ということはありませんが,だてにDIVEは設計していません).

内部もスキップに吹き抜け,ロフトにトップライトと変化に富んだ構成になっています.コストも久しぶりに気合いを入れて抑えないといけない状況.そんな状況をポジティブに乗り切りたいと思います.

でも実はハイライトは外壁.
ちょっとこれまで見たことない色になるかも?(模型は白ですが)
どうかお楽しみに!

【DIVE】オープンハウス終了

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一時は台風の影響も心配しましたが,天気もそう荒れることなく,DIVEオープンハウスは盛況のうち無事終了しました.ご来場下さった皆様,誠にありがとうございました!

朝イチからは学生さんが大勢来てくれました.今日は午後から発表があったそうですが,皆今日のオープンハウスに行くために,前日までに終わらせて今日は楽しみにして来たという言葉を聞き,ちょっと感動しました.みんなありがとう!

また同業の方から,クライアントまで皆さま熱心にご見学下さいました.これまでの我々の住宅に比べて全体的にグレードの高い仕様で,これまで使ったことのない素材も多く使った住宅でもありました.最後にソファなど家具が入ると,また雰囲気が大きく変わるかもしれませんね.

私の説明は,終始構造・架構のあり方や整合性,施工に関することだったような気がします.実際そこにはじまり,そこに着地した住宅でもありました.敷地に素直に解くことで得られた空間であり,それ以上でもそれ以下でもないという気がします.最後には構造を担当して下さった山田憲明さんも駆けつけて下さいました.

プロデュースして下さったプロトハウスの桑原さん,施工を担当して下さった渡辺建工の渡辺さんにも,共に大変お世話になりました.建工さんに関してはまだお仕事が残っていますね笑.最後まで共にフォローしていきましょう.皆さまお疲れさまでした!





プロデュース:プロトハウス・桑原さん/施工:渡辺建工・渡辺さん

構造設計:山田憲明さん(左).
私のパートナーであり,木構造の分野では国内トップランナーの一人です.

針の穴

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『針の穴を通すより難しい』

それが引渡しであると思っています.時系列で現場が進めば,いつかは完成し,竣工の時を迎えます.しかしそれはモノとしての完成であって引渡しではない.大学なら60点でも単位がもらえます.しかし実際の建築では90点でもクライアントからは痛烈なダメ出しをもらうことがあります.

我々は常に100点を目指しています.クライアントに指摘を受けるようではだめなのです.我々の基準はそのはるか先にあるのですから.しかし現実にはそうはいかない.難問は解けたのに,つまらない引っかけ問題につまづいて90点.そんなのばかり.我々はこれまで一度も100点を取れたことがありません.

細かいなあ,うるさいなあ.現場は思っているかもしれません.でも仕方がないのです.だって引渡しは針の穴を通すより難しいのですから.

嵐のような日々が過ぎ,昨日無事引渡しを迎えました.
台風一過.そんな言葉がぴたりとはまる日でした.


オープンデスク終了

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山形から来ていた学生Sさんの,のべ8日間に及ぶオープンデスクが昨日終了しました.同時に我々も今日から束の間の夏休みに突入です.

以前も書いたように,今年のオープンデスクは現場からクライアントの打合せに至るまで同席させ,住宅が作られてゆくリアルな空気を学んでもらいました.

この短い期間で彼女は,それぞれ別々のプロジェクトではありますが,『設計打合せ→見積調整→基礎工事→木工事→竣工検査→オープンハウス』とほぼ全工程に立ち会ったことになります.これは本来設計事務所に入って,1年以上実務を経なければ体験できないことです.

加えて彼女にはその前段階のプロセス,現在進行中のとある住宅の要望書を渡し,プランニングから立案という作業も行ってもらいました.

スタッフのデスクは現在満席のため,彼女の定位置はミーティングデスクの隅っこ.毎日現場とこのデスクを往復し,時に現場ではリアルなスケールを採寸し,夕方には私の指導を受けるという日々でした.


そして昨晩は最終案の発表と講評会.
スタッフからは容赦ないツッコミが飛びました.けれどもどうしてどうして.これは彼女の案がようやく我々の批評に載るレベルに達したということを意味しているのです.(前日は宿泊先で明け方まで作業していたようです)

彼女には特別に(門外不出?)私のエスキーステクニックからプランニング手法に至るまで,余すところなく伝授しました.最初はシングルラインで頼りなかった彼女のプランニング(この時点ではまだお施主さんの描く間取り図レベル)は,みるみる変貌し,日々バージョンアップを繰り返してゆきました.もちろんまだまだなところはいっぱいあるのですが,一週間でここまで人は成長できるのだということに,正直私も感動を覚えました.


初日に渡した新品のエスキース帳は,最終日には1冊とはいきませんが半分以上は使われていたでしょうか.この一週間で彼女が作成したプランは計8案.スタディを含めると10案以上は考えたのではないでしょうか.実のところこれが私が最もやらせたかったことなのです.

大学の課題では,ひと課題につき2ヶ月以上を費やして設計指導をします.けれども学生の図面がようやく図面らしくなるのは最後の1~2週間がやっとというところです.

けれども我々はそんな悠長な仕事はしていられない.時間を惜しんで集中すれば,わずか1週間で8案も作れるということ.千本ノックのように手先を動かせば,それが頭と連動して空間が肉体化するということ.そしてそれが自信となり,最後に揺るぎないプレゼンができるのだということ.


それを経験してもらえたことは,今後の糧にもなるはず.一度できたことは,次からもできるはずだからです.大学の課題も,出題から最初の一週間でここまでできれば,きっとライバルには大きな差を付けられるでしょうね.

「もう一度2年生に戻って,住宅課題をやり直したい!」
そういう彼女には,少しは住宅設計の面白さがわかってもらえたかもしれません.今日は東京見学をして帰るそうです.どうか楽しんでいって下さい.今後の活躍を楽しみにしています!

掘りごたつ

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渋谷区のビルの谷間にひっそりと佇む古いお米屋さんがあった.
引く手あまたの建設会社や設計事務所からの建替えの声を,頑なに拒み続けてお米屋さんを続けてこられたAさんのお店兼住居を,集合住宅に建て替えるという大任を任されて早1年半.とうとう今日からその解体工事が始まった.

歳は70に近いそのご夫婦は人情味に溢れ,足を運ぶたびにその気遣いと優しさに心を打たれた.仕事を離れて,このご家族のためならと私に思わせたのは,そのお人柄に加えて,その家が私にとっても実家のような温かさや,居心地の良さがあったからかもしれない.お店から上がった場所にある掘りごたつが,いつもの打合せの定位置だった.

これまでいくつの古家を解体し,更地にしてきただろう.壊される古家に感傷を覚えたことはない.けれどもこの日の私は胸が締めつけられるようだった.


都内には私の祖母の家がある.今は祖母はなく,叔父や叔母が住む家ではあるのだけれど,私は幼い頃から盆暮れに泊まりに行ったその家が大好きだった.木造平屋で縁側があり,和室には珍しい鉱物の置物があって異国の風景画が掛かっていた.

食卓は掘りごたつ.そう,掘りごたつがあったのだ.私は優しかった祖母をその施主に重ね,掘りごたつにあの家を思い出していたのかもしれない.

祖母の家はだいぶ前にハウスメーカーによって建て替えられた.祖母の習慣もあり,新しい家にも掘りごたつは設えられた.だからそこに家族の顔が揃えば,以前と変わらぬ光景があったはずなのに,私の中では何かが決定的に損なわれた気がする.

私はあの家が持っていた”匂い”が好きだったのだ.
ちょっとおどろおどろしくて,混沌としたあの家の闇が.

果たして我々が1年半もの歳月をかけて積み上げてきた対話と図面の束は,この家が持っていたもの以上の空間を,時間を,ここに作れるのだろうか.普段なるべく考えないようにしているその問いが,今日は頭から離れなかった.

S邸新築工事/柏市

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構造規模 未定
施工会社 未定
竣工予定 未定

H邸新築工事/木更津市

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構造規模 未定
施工会社 未定
竣工予定 未定

建築知識9月号

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友人建築家のFB投稿を見て,建築知識も相変わらずエグいタイトルつけてんなーとウケていたら,私の元にも届きました.あ,私も編集協力していたんだった.

では私もご紹介を.今回いくつか監修させてもらったもののひとつにハーフユニットバスの納まりがあります.使い始めた初期は,それこそ建築知識を読み込んでトライ&エラーを繰り返していました.うん,確かに10年とは言いませんが,紆余屈折,長年かけて導き出した納まりの最適解ではあります.今ではうちのテッパン.

みんなこれ真似しちゃうの?えーずるいなあ.

八王子のアールト空間

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ここはどこ?フィンランド?
いえ,八王子です.

企画委員を務めるSADI(北欧建築・デザイン協会)にて工学院大学八王子図書館の見学会を行いました.設計は武藤章氏.アールトの事務所に勤務し,帰国後は工学院大学教授として後進を育てた建築家です.

素晴らしい空間でした.アールトの空間をコピーしたものではなく,武藤流の建築流儀とスケールによって,居心地の良い空間を作っていました.そんな空間が現在取り壊しの憂き目に遭っています.そんな空間を一人でも多くの方に知ってもらいたいと思います.

以下のSADIブログにレポートを載せましたので,ご興味のある方は是非ご覧下さい.
http://sadiinfo.exblog.jp/23243729/


さて,今回のような保存問題については,私なりに思うところがあります.

最近でも国立競技場の建て替え問題で大騒ぎしています.現在の競技場は残して改修をすべき,いや建て替えるべき,建築界はケンケンガクガクです.

いや,実は手遅れで既定路線は既に建て替えで進んでいます.ザハ・ハディドという外国人建築家の案が採用され,東京オリンピックに間に合わせるべく,急ピッチで設計は進んでいるという実情があります.

その前には同潤会問題がありました.表参道の古い同潤会アパートは残すべき.しかし取り壊され,安藤忠雄さん設計の表参道ヒルズが建ちました.その時もケンケンガクガク.日本では古いものを残すというのは経済の論理の元ではほぼ無力です.学者や一部の建築家の声などかき消され,無きがごとしです.

ただ一方では,反対を叫ぶ建築家だって人のことは言えないのです.
なんといっても,古いものを壊さなければ,こと東京では仕事などできないのですから.あなたは古いものを壊したことはないのですか?

「いや,それとこれとは話が違うよ」
はたしてそうでしょうか?

「保存すべし」と叫んだ方が社会的にはかっこいいのです.「僕は保存すべきだと言ったんだけどね,結局取り壊されちゃったんだよ」そう言って遠い目をした方が正義なのです.そうではありませんか?

私は保存問題には,いつも少し醒めています.
そういうことを熱く言う人が居ればいるほど醒めてしまうのです.そしてそんな自分を少し後ろめたく思っています.

今回の図書館を見てどう思ったか.
私は「保存すべき」だと強く思いました.

空間が素晴らしかったことももちろんあります.けれどもそれ以上に,この空間は社会的にほとんど知られていなくて,報道ステーションでも朝日新聞でも取り上げてくれない問題だと思ったからです.そうしている間に,誰にも知られることなくその灯火が消されようとしている.それを思うと,その儚さに「守ってあげなくては」という思いを強くしました.

つまり保存の問題は実感の問題なのだと思います.
頭で考えるのではなく,心で考える問題だということです.

せめてこの空間を別用途に転用しようという意見もあるようです.けれども私はすこし反対です.この空間から本が抜き取られたら,それはもはや図書館ではない.この建築は,図書館であるからこそ生きる建築なのだと思うのです.

何が何でも保存,と突き走ることだけが良いことなのか私には分かりません.でも最後の最後まで粘って,結局敗れたときに,あっけなく壊されて消滅してしまうのではあまりに悲しいと思います.

せめて学生がこの空間に親しんだその生きた証のようなものが残せたらと思います.図書館が図書館として,最も輝いている姿を美しい写真などで残せないものでしょうか.せめてその刊行物を出版する動きを併行してできないものでしょうか.

空間の儚さ,建築の宿命,保存の問題・・・
昨日はいろいろ考えさせられた一日でした.


イワダレソウ

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今日は「隅切りの家」の1年点検に行ってきました.
もう1年・・早いものです.


着いていきなり目に飛び込んできたのはこの緑!すごい.
モリゾーとキッコロみたいな・・なんだか別の生命体のようです.

ほんの数ヶ月前に訪れたときは,まだこんな感じでした.


あれから緑が爆発したんですね!

これはイワダレソウ.いつもお願いする造園家の湊さんが植えてくださったものです.
正直ご予算が厳しいときなどは高木などはあまり植えられないので,こういった地被類を混ぜて植えてくださっています.竣工直後は少し寂しい感じですが,こうして1年経つと思いがけない姿に変貌してくれることもあります.

私の自宅の庭も湊さんにお願いしたのですが,気がつくと思いがけないものが育っていたりして,どこまで意図していたのかわかりませんが,湊さんに聞くと「もちろん,すべて最初から意図していた」と答えます.ほんとかなあ?

でも植栽に関しては,竣工直後よりも1年以上経った方が確実に良くなるのは事実ですね.「建築家は失敗を植栽で隠し,造園家は失敗を雪で隠す」のだと,以前造園家の中谷耿一郎さんに教えてもらいました.失敗はしてませんが(←ここ重要),植栽が入ると建物は素晴らしく引き立つことだけは確かです.


洋食屋さん

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設計事務所がハウスメーカーと競合するという人がいる.実際に施主を取られたという話も聞く.私には実感はないし,本当にそんなことがあるのか甚だ疑問だ.

街で評判の洋食屋さんの隣にガストができたら,つぶれてしまうだろうか.
街で評判の仕立屋さんの隣に洋服の青山ができたら,つぶれてしまうだろうか.

街の洋食屋さんが隣を意識して格安のランチをはじめたら,もっと安くてそこそこおいしいメニューに敵うわけがない.街の仕立屋さんが本来の業務を忘れて既製服に走ったら,より広くてよりどりみどりから選べるお店に敵うわけがない.

残念ながらこの二つのお店に未来はない.
自らの被害妄想に殺されてしまうのだ.

設計事務所に,いろいろと営業の知恵を授けてくださろうとする方々がいらっしゃる.これからの時代,こういうことをやっていかないと負け組になっちゃいますよと助言を下さる方々がいらっしゃる.おそらくは親切心なのだろう.

でも私は,設計事務所がハウスメーカーみたいなことやってどうするの?と思う.そんなのはあちらに任せておけばいいのだ.我々には我々にしかできない領域がある.私にはご依頼くださった方を後悔させないし,心から頼んでよかったと思ってもらえる自信がある.

洋食屋は洋食屋であるべきだ.隣のお店のことなんて知らなくていい.自分の味を追求し,その日に訪れたお客様を満足させればそれでよい.それだけでいいのだと思う.

建築という幻想

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正しい人になりたいと思う.完璧になりたい.そういう幻想がある.
もしかしたら,建築をやっている人はそういう幻想を持つ人が多いのではないか.

私は言うまでもなく不完全な人間だ.でも私は建築に理想を求める.私の頭の中では建築は完璧であり続ける.それを図面という手段で表現しようと試みる.

ところが,ひとたびそれが現場に入るとそれはどんどん崩れる.完璧だと思っていた図面は,実は穴だらけだったという事実を突きつけられる.

設計が完璧でないのだから,施工が完璧であるわけがない.観念の中の建築は,素材とのせめぎ合いに敗れ,人間の不注意に泣かされ,怠慢に怒り,時に努力や熱意に救われながらも,満身創痍で胴体着陸を試みる.

それはもはや理想郷ではなく,あるのは現実のみ.建築は聖から俗に変わる.神様は人間になる.私が建築の最後に見る光景はいつもそうだ.

でも建築は神殿ではない.それが住宅であれば埃一つ落とさず,物音一つ立てずには暮らせないのだ.だから建築は俗なくらいでちょうど良い.わかっている.わかっているのだけれど・・.

私はそこに聖なるものを作りたいという幻想から逃れられない.理想主義者の考える理想郷.それが建築なのかもしれない.そう考えると,なんと業深い仕事であろうかと思う.

つけない派

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刺身に醤油つけない派
そうめんにツユつけない派

おいしいの?

FP上棟

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「FP」(S邸)が本日上棟しました.

遠目から組み上がった躯体が見えてきました.「低っ」そのスケールにおもわずニヤッとしてしまいました.低く低く.今回クライアントとの合言葉はこれでした.

最高高さは5.6mしかありません.これは比較的プロポーションを低めにする我々の設計の中でも”最低”レベルとなります.下の写真で,隣の2階建て住宅と比べると,どれだけ低いかがよくわかると思います.


組み上がった躯体を見たクライアントさんも思わず,「低くてイイ感じですね!」
そうです,低くてイイ感じなのです.なかなかこの感覚を共有して頂ける方は少ないかもしれませんが.

道路に見える赤い車はクライアントの愛車フィアットパンダ.その愛車とまさに相似形を成しているような,そんな住宅です.パンダをデザインしたジウジアーロのデザイン哲学もまた,この住宅には濃厚に流れています.


ところが一方では,内部の構成は複雑に絡み合っています.床はスキップし,このスケールでありながら真ん中に中庭まで作っています.この中庭を通じて絡み合う視線やこぼし合う気配がこの住宅の肝となります.

施工は我々の仕事を最も理解してくださっている盟友・堀尾建設さんということで,こちらも今後の現場進捗が大変楽しみです.どうかよろしくお願いします!

頑固

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『お店に一人で入って気後れしなくなったのは,自分が店員より年上になったからだ』と以前誰かが書いていて,まったくその通りだと思った.

私が人に対してまともに意見できるようになったのも,自分が相手より年上になったからかもしれない.父親くらいの相手ばかりだと思っていたのに,気がついたら周りは自分と同じか年下ばかりになっている.意識もいつからか,「教えて頂く」から「教えてあげる」になっている.

40は不惑の歳だといわれる.40の大台を迎えた当時はその境地がわからなかった.けれども最近は「こういうことか」と思う.若い頃は,あんなに相手からどう見られるかを気にしていたのに,最近どうでもいいやと思う.

歳を取るとどんどん生き方が楽になる.自分の適正や価値観がガッチリ固まってしまうので,つらい道は選ばなくなる.好きなものしか食べなくなる.他の人でもできることは他の人がやればいいと思う.それが良いことかどうかは置いておいて.
ただ迷いがないということは幸せなことなのだろう.

今となっては,あれほど追い詰められていた20代が懐かしい.
生きづらかった時代.全てを背負い込み,出口が見えなかった時代.

大人になるということは,きっといろんなものを捨てて身軽になっていくということなのだろう.しかしそれに反して,経験の蓄積は人を頑固にする.私の中の無数の失敗の経験は,無意識のうちに私をそこから遠ざけようとする.経験は時に謙虚を傲慢に変えることもある.凝り固まった考えは,そこにある可能性の芽を摘むこともある.

価値観が固まり,判断にブレがなくなった分だけ,自分は頑固になったと思う.
嫌だな.歳を取ったのかな.

そんな今日,またひとつ歳を取りました.

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