GW明け
東京蚤の市
ビンゴ
週末にズキン、ズキンと頭が痛み始めた。
なんだ、これが片頭痛とかいうやつか。
睡眠をたっぷり取ったのに痛みが取れない。
原因を調べた。
1.仕事にストレスがある人は解放される週末に起こりやすい。
2.睡眠を取り過ぎるとなりやすい。
はい、ビンゴ!
降って
ジーザス!
ソフトクリームくださぁい
お昼コンビニのレジに並んでいると、一人のおじいちゃんがレジにやってきた。あぁ、おじいちゃんそこクローズしてるレジだから。こっちに並ばないと!でもおじいちゃんは気づいていない。
ふぁぁ、ソフトクリームくださぁい
「並んで下さい!」
列のできている私のレジの店員はテンパりながら、そう冷たく言い放った。
ふぁぁ、並んでんのかよぉ
そこでおじいちゃんもようやく列に並び始めた。
その後クローズしたレジも開かれ、列が動き始めた。私のお弁当がレンジにかけられると、ようやく隣のレジに先のおじいちゃんが辿り着いた。
ふぁぁ、ソフトクリームくださぁい
「味は何になさいますか?」
若い女性店員がそう尋ねると、おじいちゃんがフリーズしたのがわかった。
味?そう、きっとおじいちゃんはソフトクリームといえばバニラなのに違いなかった。けれども、その若い女性店員は容赦なかった。
「味は何になさいますか?」
気持ちイラッとしている。お姉さん察してあげなよ。バニラだよ、きっと。
隣のレジでちょっとドキドキしながらやりとりを聞いていると、ようやくおじいちゃん何を聞かれているのか理解したようだ。しかし追い詰められてテンパったのか、私の予測を裏切り”ミックス”を頼んだ。たぶん、たまたまその文字と目が合ってしまったのだろう。
しかし、その後も非情なお姉さんの攻撃はやまない。
「カップとコーンどちらになさいますか?」
かっぷとこーん??・・・
「カップとコーンどちらになさいますか?」
明らかにイラッとしてる。
あぁ、お姉さん無理だよ。黙ってコーンでいいんじゃない?おじいちゃん、ソフトクリームが食べたいだけなんだよきっと。
ふぁぁ、どっちでもいいやぁ
なかば投げやりにおじいちゃんがそう答えると、次のひと言が店に響き渡った。
「どっちか決めて下さい!」
えええっ!?
なにこの緊張感。もう店にいる客は全員このやりとりから目が離せない。手に汗握る展開。そして次のおじいちゃんから発せられる言葉を、皆祈るような気持ちで待っている。ほら、おじいちゃん、コーンコーン。全部食べられるやつ。
じゃぁ・・えっと・・全部食べられるやつで
ジーザス!
店中の客の願いが通じた瞬間、ふたたび時間が動き出したっていう、そんなお話。それにしても、おじいちゃんもチャレンジャーだけど、ちょっと可愛いかったなあ。
あのコンビニはもう行くのやめよう。
想いがすべて
人が何か物事を興すときには計画を立てる。
事業であれば事業計画を立てるし、家づくりであればまずは設計だ。ただそれ以前の問題として、その資金をどうつくるのか、その後にちゃんと回してゆけるのかということも考えなくてはならない。夢と心中するわけにはいかない。くれぐれも無理のないように。ご利用は計画的に、というわけだ。
しかし、はたして本当にそうだろうか?
無理からはじまらないと夢なんて叶わないのではないか。上手くいかないのはお金のせいではなく、浮ついた邪な気持ちがあるからだ。まずはじめることは、電卓をはじくことではなく、想いを強く深く持つということだと思う。
私は独立するとき、後先の事なんて考えなかった。独立するのが夢で、独立しないという選択肢がないのだから、独立して大丈夫か?なんて考えもしなかった。もちろん大変だったけれど、今も事務所は存続しているのだから結果オーライだろうか。覚悟が決まると、結果は後から付いてくるものなのかもしれない。
人は事をはじめる時には、デコボコのない平坦な道を歩みたがるものだ。結果的にデコボコもなく、平坦な道をリスクもなくゴールに辿り着いたとする。しかしそれは”夢”ではなく”現実”そのものであろう。近所のスーパーに買い物に行ったようなものだ。
こんなことをうちのクライアントと接しているといつも思う。さすが設計事務所に頼もうなんていうクライアントは”夢の熱量”が違う。想いの深さが半端ないのだ。
人がそれをやらないための理由はいくらでもつけられる。でもそれをやるための理由は一つしかない。我々が設計する家とはそういうものだと思う。
『リオタデザインの仕事』 できました
サイトには「設計依頼をご検討の方を対象にリーフレットと関連資料をご用意しております」という記載があります。
一応、資料請求を頂いた方には簡単な資料をお送りしているのですが、実のところ”リーフレット”という割にはずいぶんラフな資料だなあと、いつも申し訳なく思っていました。
言い訳をさせて頂きますと、その昔は逆にリーフレットという割にはずいぶん立派な資料を作ったこともありまして。ところが、お金をかけた割には差し上げた方からは全くなしのつぶてという・・涙
で、最近ふと思い立ちまして、もう少し簡易なリーフレットを作ってみました。
こちらPhotobackというサイトから作っているのですが、これがテンプレートとは思えないくらい、なかなか完成度の高い仕上がりになっておりまして。
『リオタデザインの仕事』(オンライン版)
http://www.photoback.jp/Stage/Photoback/
こちらご依頼をご検討の方は、どうかお申し付け下さい!
[B5版12P]
FP撮影
今日は3月に竣工したFP(S邸)の竣工写真撮影がありました。撮影は新澤一平さん。梅雨入り前の絶好の撮影日和となりました。
FPは複数の愛車が並ぶ家でもあり、撮影ではそれぞれの車を入れたり出したり、クライアントにも撮影協力を頂き、なかなか楽しいカットが撮影できたのではないかと思います。
また期待以上だったのはやはり緑ですね。引渡し時とは打って変わって緑が覆い繁り、建物全体に生命力が溢れていました。中庭に加えスキップフロアの効果もあり、どのアングルも絵になるカットばかりでした。
奥様にもモデルとして数カットに登場して頂きました。とても爽やかです笑。
憧れのBARIGOの気圧・湿度・温度計です。
この文字盤のデザインがもうたまりません!特に気圧計はこれからの季節にも重宝しそうです(簡単な天気予測もできるそうです)。大切にします。Sさん、ありがとうございました!
新澤さんの写真も、仕上がりが今からとても楽しみです!
目には見えない
「大切なものはね、目には見えないんだよ」
サン=テグジュペリ
髪をばっさりやって一週間が経ったのですが、
「あっ短くしたんですね」と言った人はまだ3人しかいません。
きっと目には見えないんですね。
HP DesignJet 導入事例
去年ビックサイトの建築知識さんのセミナーで、日本HPさんとご一緒させて頂いたご縁もあり、うちにも大型プロッター(HP DesignJet)を導入しました。
うちで描く図面は原則A3サイズなのですが、現場からはA2~A1サイズの施工図も良く頂きますし、イベントやコンテスト等で大型パネルを作る際などにも役立ちそうです。
逆に、よくもまあ今までA3だけでやってきたと思いますが…
そんな小事務所への導入事例ということで、先日日本HPさんに取材を頂きました。
本文にもありますが、こちらはWiFi対応品なので、事務所から離れた部屋に単独で置くことができるというのもメリットのひとつです。うちでは隣の倉庫の中に置いてあります。サイズも業界最小クラスです。
とまあ、宣伝などもしつつ。
ご興味ある方は記事もご覧下さい。
http://h50146.www5.hp.com/products/printers/designjet/user/riotadesign/
[日本HP >> 大判プリンター >>HP DesignJetプリンター >>国内導入事例]
月見問題
その日、目の前にあったのは大きな困難であった。
月見問題である。
今にして思うと、まったくを持って魔が差したとしか思えない。そもそも意味がわからない。何がって、もちろん月見そばのことである。
今すぐプチッと潰せば良いのか?
それとも潰さずに、最後まで持って行くのか?
今すぐ潰すとする。するとどうなる?
黄身は汁いっぱいに広がり、収拾がつかなくなるだろう。
すると、あれか。崩した黄身が汁に彷徨う刹那、蕎麦をその下から素早く掬い上げ、もろともに絡め取ってしまえば良いのか。そうか、それだ!
いや待て。本当にそうなのか?
それは最初のひと掬いかふた掬いのことではないか。その後黄身は汁の中へと消え失せ、”ほんのり卵味の汁”に成り果ててしまいはしないか。しかもそれを回収するには、汁を最後まで飲み干さなくてはならなくなるではないか!
あぶないあぶない。危うく道を誤まるところであった。
建築ではこういう時、結論を先延ばしにするのが定石(セオリー)である。検討と承認は常に慎重に行われなくてはならない。とりあえず箸を進めよう。そうだ、そうしよう。
ひと啜りふた啜り。その間も視線は黄身を捉えたままだ。両者睨み合ったまま、間合いを詰める。じわりじわり。どうする、俺。
そうしている間も、勝負の瞬間(とき)は確実に近づいている。
今か!いや焦るな、俺。
そして、その瞬間はやってきた。
とうとう覚悟が決まらぬまま、どんぶりの底が見えてきてしまったのだ。ガッデム!
突然の幕引きに関係者に動揺が広がる。果たして閉店を言い渡された最後の客のように、卵は残りの汁と共に、一瞬にして喉の奥へと吸い込まれていったのであった。
なにこれ。
結局かけそば食っただけっていう。
そして結果、ツユも全部飲んでしまったっていう。
果たして何が正解であったのだろうか。あれからずっと考え続けている。人生には、時に答えが見つからない時もある。そう、今の私のように。
暁の家・上棟しました
暁の家は雄大な自然、というには大げさかもしれませんが、自然豊かな丘陵地に建つ家で、この日も上棟作業を見守る中、キジが目の前をチョロチョロと横切ってゆきます。Sさんご家族もそんな環境に相応しく、ワイルドでどこまでも明るい方達なのでした。
建物はそんな環境と景観を活かすべく、東側と西側に大きな開口を取っています。上の眺めは西側からの眺めですが、どこまでも続いてゆく広い眺めと、そよそよと絶え間なくそよぐ風が最高に気持ちよかったです。(遠くに私のオレンジ色のパンダが・・)
建物は2階建て+ロフトという構成ですが、ロフトまで上がると2層分の吹き抜けが目に飛び込んできます。私は高いところは苦手ですが汗、チャレンジャーの娘さんと一緒に上から眺めてみました。う~ん、やっぱ恐いです・・。
若くて、これまたワイルドそうな?棟梁がこれからコツコツと作業して下さいます。娘さん達にも、仕事をする職人さんの背中を目に焼き付けて頂きたいと思います。
引続き、安全作業でよろしくお願いします!
佐藤布施事務所のしごと
友人事務所・佐藤布施建築事務所のオープンハウスに行ってきました。たびたびブログにも書いていますが、主宰者のひとり布施木綿子さんは大学の同級生にして、私の大切な友人の一人でもあります。
竣工すれば必ずオープンハウスを行う私とは異なり、彼女達はある時期までほとんどその仕事を見せてはくれませんでした。
「たまには見せてよ」と請う私に、いつも「見せられるようなものではない」なんて謙遜しながら、しかしたまに気まぐれに見せてくれる住宅はどれも素晴らしい出来栄えで、これは私を効果的にヘコませるにはこの上ない手段となっていました。きっと作戦だったのでしょう。
そんな彼女から、珍しく意気込んだ内覧会のお知らせが届きました。
受けるかもしれない批評に保険をかけているのか、いつもは控えめな説明文に対して、今回はどうも自信があるのか、”いいものが出来た”という感触が案内文からも伝わってきます。
しかも・・
聞くところによると、このお施主さんは(なぜか)私のブログのファンで、いつもチェックして下さっているとのこと。これはしかと見届けなくては!と、こちらも意気込んで出かけていったのでした。
(と、これを読んでいるお施主さんはすでにドキドキしていることでしょう。さあ、辛口にいきますよ!?)
いきなりアプローチの洗礼。これはまごう事なき湊さんの仕事ですね。
これもうちのブログではネタの常連となっている造園家の湊さん(ストライカー)ですが、もとはといえば、佐藤布施事務所の造園があまりに素晴らしかったので、10年ほど前に紹介して頂いたという経緯があったのでした。
さすが猛獣使い、もとい湊使いの元締めだけあって、湊さんの使い方が実に上手い!湊さんはうまく手綱を握って予算を確保してあげると、惚れ惚れするような仕事をするのです。この分だと中の庭はさぞかし・・。そんな予感を感じさせるには十分なアプローチです。
早速中に入ってみましょう。
彼女たちが意図した”はなれ”という構成、そして外部と内部を一体に結びつける精緻な外構。吹き抜ける爽やかな風と光にも唸らされました。丁寧な素材使いやディテールワークもまた、それらを魅力的に引き立てています。
庭を挟んで向こうに見えるのは、六角屋根を持つ音楽堂(はなれ)。
敷地に多少余裕があるとはいえ、40坪強の敷地に”はなれ”を計画する。その発想は私にはないかもしれません。しかも左官外壁の母屋に対して、はなれの外壁はレッドシダーのシングル葺き。しかも屋根は六角形!
何一つとして論理的には説明がつかないことばかりなんです。
でもココ、ココが重要なんです!(はいここテストに出まーす)
この大胆さに私はいつも脱帽してしまうのです。
どうしてあっちとこっちがくっついて、こっちとあっちが離れるのか、私にはまったく理解出来ないのですが、結果的に本当に素晴らしい空間になっているのです。これが布施マジックなんだなあ。私にはない異次元の才を感じます。
このキッチン前の仕上げはわかりますか?これはブラックミラーなんだそうです。
キッチンの前にミラー…これも凡人にはわかりませんね?
これは壁に向き合っていても後ろの家族の様子がわかる、そして同時に緑も視界に捉えるという、とっても合理的な理由に基づくものなのだそうです。お兄さん、ここでも一本取られました。(これはパクろう 参考にしよう!)
いや本当に素晴らしい住宅でした。
私は建築家には、大きく分けて二タイプあると思うんですね。ひとつは理念や概念的なものを規範に作る人(左脳的)、もう一つは五感や触覚的なものを規範に作る人(右脳的)。
私は佐藤布施さん達の仕事は、どちらかというと後者の作り方のように思えます。それがどういうものであるか、それを言葉に置き換えると、光や風、土や緑といったものになるのでしょうが、私には違和感が残ります。彼らの意図や設計は、そんな陳腐な言葉に単純に置き換えられるようなものではないからです。
言語化できない領域こそに、空間の本質は備わるのかもしれませんね。そのくらいこの空間は気持ちが良かった。写真ではその魅力の半分も伝わらないでしょう。そこがまたもどかしいところです。
今日はいいものを見せて頂きました。どうもありがとう!
◇
「友がみなわれよりえらく見ゆる日よ」
そんな言葉が頭から離れない今日このごろ。家に帰ってブログとしたしむ。
だれも知らない建築のはなし
勇気
好き嫌いはなくしましょう、というのは今にして思えば大人の陰謀だったのかもしれない。嫌いなものは食べなくても生きて行けると思う。ピーマンには泣きながら食べなくてはいけないほどの栄養価が本当にあるのだろうか。
大人になれば必ずしも楽しい仕事ばかりじゃない。なりたい職業に就けるわけじゃない。嫌いな人ともお付き合いしなくちゃいけない。好き嫌いはいけない。嫌いなものを今から進んで食べられるようにしましょう。
嫌いなものは食べなくていい。食べたいものだけを食べればいい。私はそう思う。むしろ嫌いなものは食べないという意思を持ち続けることは、現代においては勇気を意味する。勇気ある大人になってほしい。
国立競技場問題について
2020年東京オリンピックの会場ともなる新国立競技場の建設問題について、建築家・槇文彦氏を中心としたグループが、屋根をもう少し簡易な構造に変更することで、大幅な予算削減を実現するという代替案を発表した。あげくには、建築家ザハ・ハディド女史との契約は解除しようとする流れまであるらしい。
『世界的建築家・槙文彦氏「日本チームで作る」…新国立設計』
http://www.hochi.co.jp/topics/20150606-OHT1T50035.html
そもそもこの競技場問題の大きな論点は2つである。一つは巨大すぎることで周囲の景観を破壊するという点、そしてもう一つは建設費がかかりすぎるという点。
もう一つ加えるならば、設計を担当している建築家のザハ・ハディド女史は、業界でも有名な前衛建築家であり、彼女の案をコンペで選んだ審査プロセスやコンペプログラムも含めて、コンペ主催者側の責任も問われるべきだとする点、であろうか。
…スケールが大きすぎて、イマイチ何が起こっているかイメージできない方のために、これを我々の住宅設計に置き換えて説明したい。
◇
建築家は名だたるライバルを抑えて、住宅のコンペで当選を果たした。斬新だが費用がかかりそうなデザイン。しかしクライアントは他の提案とは一線を画すその案を選び、夢を託した。
予想通り設計は困難を極めた。しかし当初のままとはいかないまでも、なんとか近隣問題や技術的なことに可能な限りの折り合いをつけて、設計はなんとか完了した。ところが見積りを取ると、それでも大幅な予算超過となってしまった。
この顛末を聞きつけたのがライバル達である。そもそも予算は決められていたわけだし、景観も破壊しかねない外観だ。自分ならもっと良い案が作れるはずだし、建築家の案が面白いわけがない。
「やっぱりそうか!」
「いやね、私もあれはひどいと思っていたんですよ」
「このままじゃ、あのお施主さんがかわいそうだよ」
「そもそもでかすぎるんだよ。あんな屋根なんてやめちゃえばいいのに」
かくしてクライアントの元には、ライバル建築家達から頼んでもいない代替え提案が届く。少々強引な建築家と、予算超過に頭を悩ませていたクライアントは、彼らの思いやり(余計なお世話ともいう)にあふれた提案に心が揺らぐ。
「でも、先生にこんなこと言えないですよ…」
と弱腰なクライアントに彼らはそっとささやく。
「やめさせちゃえばいいんですよ。その後は我々が引き継ぎますから。予算も守るし、お施主さんの言うことも聞きます。いいんですか?このままで。取り返しのつかないことになりますよ?」
そして建築家の元には、ある日突然の契約解除通知が届く。
寝耳に水の話に驚いたのも束の間、それはライバル達が根回しをした結果だと知る。「あいつら…ゆるさん!」
しかも、クライアントが最も期待を寄せ、自分も最も心血を注いでいた曲面を描く大屋根のデザインは、予算的な理由から普通の切妻屋根になるという。予算超過でクビになっただけならまだしも、今回はライバル達が勝手に自分の図面に手を入れて改変してしまおうというのだ。しかも許しがたいデザインに…。
…
こんな屈辱ってあるだろうか?
そんなことをしてできたものは、建築でも何でもない。
もちろん予算超過した建築家が悪い、という正論はあるだろう。でも選んだのは素人ではなく専門家達なのだ(委員長は安藤忠雄氏)。その案がどのくらい大変な案かはわかっていたはずだし、もっと安全策も取れたはずだ。しかしザハを選んだ。
住宅と公共建築は違う、その費用は血税でまかなわれるのだと言われれば、それもその通りだろう。しかし私は同じ建築を生業とする建築家として、この仕打ちはあまりにひどいしフェアじゃないと思う。それを”世界的”建築家が主導しているというのが私には信じられないのだ。
レクチャーの日
昨日はたまたま2箇所から講演を頼まれ、午前午後とハシゴしながらお話しさせて頂きました。
午前は大学の同級生である玉木さんに頼まれ、彼女の勤めるリフォーム会社のセミナーに。同級生に設計を頼まれたことは何度かあるのですが、セミナーは初めて。リフォームの話をする機会は少ないので、自分の仕事を振り返る機会にもなりました。
午後は、松井郁夫さんの主宰される「き組」ゼミで今日はお話をさせて頂きました。
私などはほぼ独学で木造を学んだので、最初松井さんにお会いした時には「基本がなっていない!」とお説教されるかと思っていたのですが、実際の反応は真逆のもので、松井さんの懐の深さに感謝しています。
今日の話はてんこ盛りで、調子に乗って2時間半もお話してしまいましたが、全国各地から集まる「き組」の受講生からは、私のブログのファンだなんていう方もたくさんいらして、温かく迎えて頂きました。
松井親子の関係もまた、私にとっては憧れで、私も息子が成人したらこんな関係でありたいと強く思ったのでした。
講演後も松井さんがうつらうつらと舟を漕ぎ始めるまで、毒の入った、もとい刺激的な話がいつまでも続きました。今日は本当に楽しい時間をありがとうございました。ご参加の皆様にも感謝致します。
[FP]写真をアップしました
今年3月に竣工した川越市 FP(S邸)の写真をアップしました。
http://www.riotadesign.com/works/15_fp/#wttl
小さな中庭とスキップフロアのある住宅ですが、とても丁寧に美しく住みこなして下さっていて、写真のひとつひとつからも、クライアントの空間への愛情のようなものが伝わってきます。撮影にも楽しくお付き合いくださいました。
写真家に撮影をお願いする楽しみは、設計者ですら気づいていない建物の魅力や側面を発見して下さる点にあるように思います。
今回の写真家は新澤一平さん。いつも美しい写真を撮って下さいますが、今回の写真にもはっとさせられました。この建物って、こんな空間だったんですね。私には見せない表情を、この日は特別に新澤さんには見せてくれたようです。
素晴らしい写真をありがとうございました!
レクサス
その昔、とあるクライアントがいらした。この方は以前からうちのオープンハウスにも顔を出し、北欧つながりのキーワードでも繋がっていた方だった。
ある日、この方がとうとう満を持してうちに設計相談にいらした。私は歓迎した。大いに盛り上がった打合せの最後に、しかしクライアントはこう切り出したのだ。実は別の建築家にも声をかけている、と。要はコンペというわけだ。
そのコンペは、結論から言うと負けた。
そのクライアントはとてもウマの合いそうな方だったし、その人の態度はまるで私を本命視しているようでもあった。それを真に受けた私がウブだったのかもしれないが、まるで相思相愛と信じた相手に、確信を持って告白したらフラれたくらいのインパクトで、私は深く落ち込んだ。
その方のその時の断り方もまた、その後の私の心に長く尾を引くことになる。言い換えるならば「一番好きなのはあなただけれど、一緒にはなれない」的な。私ではなく誰に頼んだかは結局聞かなかった。
それから一年ほど経ったある日、ふとこのことを思い出した。
あの時決まっていれば、そろそろ竣工する頃だな。その日、どうしてそんな事を思ったかはわからない。私に未練がなかったといえば嘘になる。しかし思いが引き寄せたというには出来過ぎな話だが、その日私が久しぶりに自分の設計したカフェに行くと、扉を開けて出てきたのはそのクライアント本人だったのだ。
往年のトレンディドラマ「東京ラブストーリー」なら、あのBGMが流れるシーンであろう。衝撃的な再会。なぜ私のカフェに?あいつと幸せになったんじゃなかったのか!?これがドラマなら、まさに雨の中傘もささずに、という状況である。
「あっ関本さん…」
「あの、どうしてここに…」
「あ、あの…もうすぐ完成するんです。もしよかったら…あの、オープンハウス来てくれませんか?」
何を言っておるのだ。まさに別れた女性から「結婚式には来てね」と言われたようなものではないか。
「も、もちろんですとも!案内送って下さいね」
かくして私はノコノコとオープンハウスに出向いて行ったのだ。羨望と祝福の声が飛び交うその場所で、私は作り笑顔を浮かべていた。クライアントもいらした。「ご竣工おめでとうございます!素晴らしい空間ですね」(…幸せになれよ)
しかし私の心を真に乱したのは、実にその後のことであった。
その家は某著名建築家の設計により完成を迎え、数ヶ月後には建築専門誌にも掲載された。大胆かつ斬新な空間構成。大幅に誌面も割かれていた。そのどれもが、当時の私には持ち得なかったものだ。清々しいまでの完敗…。
しかし!
私は見逃さなかった。その写真に写っていたその生活風景を。そこには当時の私が好んで用いていた素材が散りばめられ、我が家と同じデザインの家電があり、私の好んだ北欧デザインや家具が並んでいた。購入元も私と繋がりがある場所からだった。この空間は…私の空間ではないか!
その時に悟ったのである。
「一番好きなのはあなただけれど、一緒にはなれない」という言い回しの真意を。私はその時、みすぼらしい男が、走り去るレクサスの後ろ姿を見送ったような心境であった。そしてこう心に刻んだのである。「今に見てろ、見返してやる!」と。
(「伝説の日本の社長」より)
Discover Japan 7月号
現在発売中の「Discover Japan」に「隅切りの家」が掲載されています。
[Discover Japan 7月号]
http://discoverjapan-web.com/new/201507
この雑誌はインテリア誌ではなく、世界に誇れる日本文化の魅力のようなものを発信する媒体のようですが、今回は「家づくりの新常識」という特集にて取り上げて頂きました。
取材では、ほんの1年前にお邪魔した際は生まれて間もなかった赤ちゃんが、もうすっかり”子ども”になっていてびっくりでした。いやはや、我々は相変わらず何も成長のない大人たちです・・。
満開の桜の風景も魅力的ですが、新緑の光景もまた緑のカーテンのようで気持ちが良さそうです。どうか書店でお手に取ってご覧下さい。